憧れの高校へ

私にとって、その高校に入ることは特別な意味があった。社会の底辺からスタートした母が、私をそこから救い出そうと自分自身の人生を賭けて手を尽くしてくれていたからだ。憧れの高校へ通えることの喜びを噛みしめながら新たな生活が始まった。

入学式の日は、バスに乗って高校に行ったことは覚えているが、それ以降のことはよく覚えていない。バスのなかでとても可愛い女子生徒が乗っており、一目見れば皆が目を引くような容姿だった。高校の前のバス停で降りるとその子も同じバス停で下車した。私は、同じ高校なんだ、と思いながら高校に向かって歩いたが、記憶はそこで途切れている。

断片的な記憶は、体育館で行われた新入生向けの部活動説明会に繋がっている。私は、中学校から真剣にバドミントンをやっており、高校に入っても続けようと思っていた。バドミントン部が説明をする順番になると、中学校の先輩だった人が部長として説明した。「バドミントンは楽に見えるかもしれなが、練習は非常に厳しく、経験の有無は問わないが、本当にやる気のある人だけ来てください」と短い説明だった。

体育館は、二階に狭いウェイトトレーニング場があり、そこから体育館のフロアを眺めることができた。説明会の後、その場所からバドミントン部の活動を眺めていると、他に男子生徒数名がバドミントン部への入部を希望して集まってきた。バドミントン部の部員が勧誘に来るのかと思ったが、全くその気配もなく、そこに集まった数名でバドミントン部が活動している場所に行った。

対応はそっけなく、着替えていきなりランニングをするように言われた。運動用の靴をその時は持っていなかったので、仕方なく通学用の靴で走るしかなかった。もともと長距離走には自信があったため、それほど大したことはなかったが、長い受験生活で体が訛っており、思った以上に息が上がったことに自分でも驚いた。

私の高校生活はこんなところから始まった。

一九八六年四月初旬