熊の胆

まだ保育園に行く年齢になる前だった。

夕食を終えた後、居間で何かに夢中になって遊んでいた時、おなかが痛くなってきた。みぞおちの奥の方に重たくて鈍い痛みを感じていた。母に言うと、熊の胆という薬を飲ませてくれた。その当時は富山の薬売りが定期的に家に来ていた時代で、その行商人から薬を買っていた。熊の胆と赤玉というおなかの薬がいつも薬箱に入っていた。

薬を飲んでしばらくしても痛みは一向に収まらなかった。気持ちが悪いとか吐き気がしたという分けではないのに私は突然嘔吐してしまった。母が大きめの黄色いバケツにお湯を入れて持ってきて綺麗にしてくれた。そのバケツに飲んだばかりの黒い色をした熊の胆がふやけて浮かんでいたのが妙に記憶に残っている。その後も私は同じ遊びを何事もなかったかのように続けた。

一九七〇年代前半