数えきれないほど父と釣りに行った。晴れた日で夕日が美しかった時、防波堤まで波が掛かる程の悪天候の時や、遠方の釣り場に行った時の事など様々な思い出がある。
船で出たことは一度もなく、防波堤からの投げ釣りが主だった。夏場から秋にかけてのキス釣りやサビキを使っての小アジ釣りは数多くやった。秋口から冬にかけてはぶらくりおもりを使用したアイナメやホッケ釣りもやった。
夏場から寒くなるまでの季節は、天気が良いと夕日が特に美しかった。テトラポットに登り仕掛けを投げ、夕日に染まる赤い空を見入りながらの釣りは、父と私にとって最高の道楽だった。次の日からまた月曜日で学校か、と思いながら沈みゆく夕日を見ていると辛くなったが、来週また釣りに来れると思うと元気が湧いたものだった。
遠方の釣り場に行くため、早朝の四時前に起きて真っ暗闇のなか家を出発したこともあった。それ自体がいつもとは違い楽しかった。家を出てすぐの時間帯は、車の通りがほぼ無く信号がすべて黄色く点滅しており、車は止まることなく走り続けることが出来た。山を背に磯で仕掛けを投げているだけでも楽しく、朝日が登る前の静かな海は躍動感に満ちていた。
あの釣り場は今もあるのだろうか。いつの日かまた訪れて、あの時のような美しい夕日や夜明けを見てみたい。
一九八〇年頃