良心の呵責

冬になり雪が散らつき始めた頃、保育園の友達とスーパーに行った時の事だった。その子とお菓子売り場でお菓子を見ていると、その友達がこっそり取って帰ろうと言った。

その子は、細長い長方形のお菓子をコートの下に隠して、私にも同じようにやれと言った。物を取る事など出来ない、やっぱりやめようと私は答えた。しかし、その子から大丈夫だからやれよと言われ、私はしばらくもじもじした挙句、服の下に同じように隠して二人でスーパーから出ようとした。

その瞬間、店員の人にちょっとおいでと言われ、手を繋がれて奥の事務所に連れていかれた。そこで、何をしようとしたのか私達に説明させた。私は、その友達にやれと言われてやったと説明した。その友達は、逆に私にやれと言われたからやったと言った。明らかにその子は嘘を言っていた。

店の人は、親を呼ぶため電話を掛けており、私は恐ろしくて固まっていた。しばらくするとその子の母親が飛んできて、ものすごい剣幕でその子を叱っていた。その後、その子は母親に連れられて家に帰り、私の方は母が来ることなく一人で家に帰った。

私は家で母に叱られるだろうとずっと身構えていた。結局、母が私に何か言うことは無く、敢えて私には言わないようにしているのだと思っていた。その後、私は長きにわたり良心の呵責に苛まれる事となった。

この万引き騒動は、私の人生で誰にも言えない秘密だった。自分が人の親になり随分と時間を経たある時、母にその事を話したが母は全く知らなかった。あの時、店の人は私の母には連絡しなかったのだと知った。あの店員は一部始終を見ておりすべて知っていたのだろう。

五歳から長い間、心に曇ったような感情を抱き続けなければならなかった事を思えば、 その時、母に真実を知ってもらった方が楽だったに違いない。 今でも最も思い出したくない出来事である。

一九七六年