一面の真理が明らかになった七年前の夏は本当に暑かった。
あの時、私が父に言った事や父自身が言った事を、父はその後しばらくして忘れてしまったようだった。父は、何を言われていたのか、なぜ皆が怒っていたのか、実は分からなかったのかもしれない。
父のあの言葉「母と今までこんなに仲良くやってきたのに何でへそを曲げてしまったのか、自分が何か悪いことでも言ったのだろうか」
このあまりにも的外れな言葉は、今思い返しても意図的に演技や嘘で言っていたとは思えない。いま新しい視点から見直すと、過去あった不可解な多くの出来事は整合性が取れているように見えてくる。
父は、普通の会社で定年まで勤めていたし、なんとなくおかしなことをよく言うが、日常生活で困るようなことも無かった。誰も違った角度から見ることなど考えもしなかった。
現実に起きた事は、知能的に問題があったかもしれない父とそのような事を知る由もない母が、五十年以上一緒に生活したということだ。
この見方が正しかったとしたら、様々な問題は不可抗力の悲劇としか言いようが無い。誰が悪いわけでもない、やはり二人とも時代に翻弄されたのだ。