最初で最後の話合い

母と私は喫茶店から実家に戻り、この時初めて、母は今までの怒りを父にすべて伝えた。父は何を言われても頷くだけだった。まるで子供がしかられている最中、やり過ごすためじっとしているかのようだった。

そして、私は、母が苦しんでいた時になぜ何もせず助けようとしなかったのか、父に聞いた。

父は「自分が何を言っても悪者にされるだけだから何も言わない」と言った。

私が「なぜそんな卑劣なことができるのか。見えなかったのか?気が付かなかったのか?エレベーターの中で母が蹲っている姿に気がつかなかったのか?」と聞き返した後、

父は「そうだ」と頷いた。

母は「信じられない、気が付かないわけ無い、見えないわけ無い、狭いエレベータに乗っていて、目の前で蹲っていたのだよ」と怒りを露にして言った。

父はついに口を開き「結婚した時はよかったが、途中からバカ扱いされたからだ」と言った。

私は「バカ扱いされた事を恨みに思って、手を貸す気なんかなかったんだな。自分は救急車を呼んでもらったり、度重なる病気で散々世話をしてもらい助けられたにも関わらず、母の時はどうなってもよかったのだな」と確かめるように聞いた。

父は頷いた。

話合いはそこで終わった。これが父の真意だったのだろうか。このような機会は二度と来ないだろうし、それ以上真実を追求する術はもう無いに違いない。