碧空の下で

接客業が好きだった母が、本来の自分に向いている仕事に就いた。低賃金でしか働いたことのない母は、基本給の高さに驚いたという。数ヶ月の研修期間を経て徐々に仕事に慣れてくると、ついに母の快進撃が始まった。

母のお客様を最優先に考えた営業は、成績に如実に現れていった。家事を終えた夜遅くから様々な書類を床に広げ、常に試行錯誤を繰り返しながら独自の仕事の方法を確立していった。布団に入った後に良いアイディアが浮かべば、すぐに枕元に置いてあるノートに書き留めた。その姿は、母が学校の勉強を何とか続けようと不十分な明かりの中で必死に本を読んでいたあの頃に重なる。

初めて将来を見通せるようになり、現在に繋がる確かな道を歩き始めた時だった。

新居に移った当時は、まだ社会資本整備も進んでおらず、下水のための側溝などもなかった。生ごみは自分の家の庭に埋めていた時代だった。そこから急速に国土は整備され世の中は変貌し続けた。

気がつけば、母は所属する営業所で十数年にも渡りトップ成績を維持していた。時に会社の方針に逆っても自分の営業スタイルを崩さなかった。それでも母はトップであり続けた。度々、表彰もされたし、招待旅行に行くこともできた。定年の年には、会社が母にまだ仕事を続けてもらえるよう頼んだほどだった。

もうあの頃ではない、空を見上げれば雲ひとつない青空に太陽の光が満ちていた。(第二章 終)