お弁当

私にとって、中学生になった時に最も嬉しかったことは、給食がなくなり、お弁当持参になったことだった。小学生時代の完食主義教育のトラウマから逃れることができたことで、私は本当に救われた。

母は、仕事を持っているなかで毎朝お弁当を作ることは大変だったと思う。中学生だった私にはその苦労が分かるまでの年齢ではなかった。そのような苦労が分かるようになったのは高校生になってからだった。今、思い返すと母には大変な苦労をかけて申し訳なかったと思うが、同時に本当に有難かった。

土曜日は、授業が午前中までだったため、部活のための昼食は近くのパン屋でよく買った。私は、たまに買うサンドイッチや菓子パンがとても嬉しかったが、母にとってもその日だけは早朝にお弁当を作らずに済んだことはよかったのだと思う。

母の仕事は営業職で朝から出社しなければならなかった。そのような生活のなかで毎朝お弁当を用意することは想像を超える大変さがあったに違いない。自分が社会人になって初めてその苦労を理解できたように思う。

一九八三年