団扇の金魚

保育園の盆踊り大会の時だった。幼少の頃から私は体が弱く、すぐに扁桃腺を腫らし高熱で保育園を休むことが度々あった。その時も盆踊り大会の数日前から高熱で保育園を休んでいた。

当日にやっと外出できるようになると、夕刻、私は浴衣を着せられて母や姉と共に保育園に行った。保育園の部屋に入った時には辺りは暗く、私以外の子供達は会場となっている近くの公園に集まっていた。

その部屋で、盆踊りの時に持っていく団扇に金魚の絵を描くよう先生に言われた。他の子供はみなその団扇を持って公園に集まっているようだった。何事もやるのが遅かった私は、何をしてよいのか分からず戸惑っていた。その場には姉もおり、こんな風に書けばよいのだよ、と言われながら描いた。

私は、はやく終わらせようと焦りながら描いていた。金魚を描き終えたが、金魚の口から泡ぶくが出ている様子も描く事になっていた。姉から、小さな丸を金魚の口からいくつか描けばよいと言われ、急いで描いた。

その四、五個ほどの泡ぶくを表した小さな丸は、金魚の口から水面方向に垂直ではなく、水平方向に出ていた。それを見た姉はとても笑い、そっちの方向ではなく上の水面の方向に描けば良いのだよ、と言うのですぐに泡ぶくを水面方向にいくつか描いた。

出来上がった団扇の金魚は、口から水平方向と垂直方向の二方向に泡ぶくが出ている奇妙な物となってしまった。その時の恥ずかしかった事が忘れられず、盆踊りの季節になると良く思い出す。

一九七六年