一人暮らしを始めた頃は不安で、五月のゴールデンウィークになれば帰省できるのだから、と気休めに考えていた。しかし、大学生の生活にも慣れ、五月に入る頃にはサークルの付き合いや勉強で忙しく、帰省のことは考えなくなっていた。
五月の連休には、サークルの一泊旅行があった。湖のほとりの民宿で新入生を酔いつぶすというものだった。今であれば犯罪と言っても過言ではない、恒例行事だった。先輩達は、借りた民宿の部屋が一切汚れないように、新聞とビニールを隅々まで敷き詰めガムテープで留めていた。
昼間は湖でボートに乗って遊んだりし、夜になると一年生に酒を飲ませる宴会が始まった。人に飲まされることが嫌だった私は、酔ったふりや気を失ったふりをして逃げ通した。その当時、新入生が急性アルコール中毒で命を落としたというニュースが毎年のように聞こえてくる時代だった。
五月の連休明けには、学内の雰囲気も落ち着いていた。連日のように飲み会に行くメンバーもいたが、生活費の関係もあり、私はあまり参加しなかった。そのかわり、サークルで同じように一人暮らしをしていた何人かの仲間と、お互いの家で尽きることの無い話をしながら、安い酒を朝まで飲み明かしたものだった。
私にとって、少ない人数ではあったが、知り合えた仲間と共有した唯一無二の時間こそが学生時代で得た最も貴重なものであり宝だった。
一九九〇年五月