小学校には特別学級というクラスがあった。特別なサポートを必要とする生徒のクラスだった。そこの生徒達は、校外授業などの時に通常クラスの生徒達と行動をともにすることがあった。私のクラスには二人の生徒が来ていた。
そのうちの一人は、直樹君という名前だった。やはり遠藤君が、彼の面倒を良く見てあげており、彼も遠藤君の言うことは良く聞いた。そして、直樹君の口癖が「遠藤君のコーラ」だった。その言葉を言う度に、クラス中に笑いが広がった。また、直樹君は、よく自分の唾を膝に手でこすりつけていた。遠藤君が「直樹!そんなことしてはいけないんだぞ」というと不思議とやらなくなった。
小学校卒業後は、彼らは支援制度の整った学校に行くことになった。当時の中学には彼らを支援する制度は無く、同じ校区の学校に行くことはできなかった。
小学六年が終わろうとしていた時、直樹君の母親からクラス宛てに手紙が送られて来た。担任の先生が皆の前でその手紙を読んでくれた。そこには、息子を仲間として受け入れてくれたことを心から感謝しています、特に遠藤君には良くしてもらい、息子は幸せだ、という内容が書かれていた。
直樹君たちがクラスの一員であることは自然だったので、感謝される理由がその時は分からなかった。それが理解できたのはもう少し歳を取ってからだった。あの時に面倒を良く見ていた遠藤君は偉大な人だと思う。いつかまた会える時が来ることを願っている。
一九八三年春
