あとがき
父が旅立った後、私は記憶を辿り続けてきた。今もなお父が逝った事を実感できていない。父が七〇代の時、言っていた事がある。「自分の兄弟は皆、三の付く歳で亡くなっている。自分はきっと八十三歳だろうな。自分の…
父が旅立った後、私は記憶を辿り続けてきた。今もなお父が逝った事を実感できていない。父が七〇代の時、言っていた事がある。「自分の兄弟は皆、三の付く歳で亡くなっている。自分はきっと八十三歳だろうな。自分の…
帰国は数年に一度だった。出張の場合がほとんどで滞在期間も一週間程度と短かく、父と会う機会も随分と減った。 英国で多忙な日々を過ごしているうちに、私は心臓疾患を患い緊急手術が必要となってしまった。二〇一…
実家に帰った時、父はカメラと釣り具を私に見せ、「もういつ何時自分もどうなるか分からないから、このカメラと釣り具を私に残すために大切に取っておくから」と言っていた。 カメラは両親が結婚したての貧しかった…
私が駐在で渡英した翌年、両親を滞在期間一か月の英国旅行に招待した。両親は海外に行った経験は無く、英国に行く事など想像もつかなかったに違いない。私は空港に出迎えに行き、両親との再会を喜んだ。家に向かう途…
私が就職して十年近く経ち、英国に駐在員として派遣されることになった。 渡英する直前に皇居近くのパレスホテルで両親が壮行会を開いてくれた。そこには私の姉家族と妻の両親が招待されていた。広めの和室に皆が集…