父の自慢の一つは車の運転だった。父の若い頃はまだ車が一般的に普及する前だったが、その頃から大型運転免許を持っていた。そのため、運転は父のアイデンティティーの一つになっていた。
しかし、大型免許は若い頃に失ったという。書き換えを忘れたか何かで失ったようだと母は言っていた。父は私が幼い頃に、自分は大型免許は無くしてよかった、持っていたらいい気になって悪い方向に行っただろうから、と話していた。その真意がどこにあるのかは今となっては知る術もない。
生涯無事故で駐車違反もほとんど無かったように思う。父は「多くの人が何度も切り返さないと駐車できない場所でも自分はほぼ一度で入れられる」と自慢気に話していた。
初めての自家用車であるトヨタのコロナを購入したのは、私が保育園の時だった。自家用車を買う以前、父は会社のトラックで通勤していた。昔のトラックは、パワーステアリングが無かったため、冬は車を温めてからでないとハンドルを回せなかった。凍てつくような寒さの日は、トラックを動かすこと自体が大変だったと言う。
その1tトラックの荷台からうっすらと漂っていた海産物の香りが、記憶の奥底に残っている。
一九七〇年代中頃