家族旅行

家族旅行は、私が小学一、二年生の頃、温泉と佐渡に行った二回だった。

温泉旅行の時は、家から車で一時間半くらいの海岸沿いにある温泉街に行った。父と温泉に入った事と、休憩場でゲームをしたことを覚えている。温泉浴場は十人も入れるかどうかという大きさだった。

私と父が入った時には三人の一家族が既におり、その父親は子供の体に石鹸が付いていてもよく流すことなく湯舟に入れていた。私と父は「汚くて嫌だな」と話しながら体を洗って温泉に入った。そのあと休憩場で涼みながら、十円玉を入れて上から下へ左右に転がっていくゲームを何回かやらせてもらった。あの時の薄暗く古めかしい場所が印象深かった。

佐渡旅行の時は、行きの船で、私は腰掛椅子に空いている穴に入れた指が抜けなくなってしまい、大泣きした事があった。厨房の人が洗剤を使い滑らせて抜いてくれたが、幼少だった私は、そのあと随分長く塞ぎ込んだ。

船から降り、旅館に行くために両親と母の妹とバスを待っていた。バスは一向に来る気配がなく、バスを待たずに歩いて行くかどうか父達が話ていた。雨がぱらついていたが、父は歩いて行き、母達はバス停で待つことになった。父は私に「男だったら、いっしょに来なさい」と言ったが、私は雨の中をどこまで歩けばよいのか分からない恐怖から母達と残った。程なくしてバスが来て旅館に着くことができた。

私は泳ぎたくて仕方なかったので、旅館に到着した後、曇り空だったが海に連れて行ってもらった。夜になると、みんなで土産屋通りに出てお店を見て回った。帰りの船は行きと違いかなり揺れ、船に強くない父は酔い止めを飲んで寝ていた。そんな佐渡旅行の記憶もその辺りで途切れている。

私は幼少の頃もっと旅行に行きたいと思っていたが、両親は共働きで忙しく経済的にも余裕がなかったため、旅行には行けなかったのだと後に悟った。

一九七〇年代後半