ほとんど使用していない父用のコートやセーターを母が送ってくれたことがあった。その中に、昔、私が父にプレゼントしたセーターがあった。そのセーターは、二十四年も前に私が初任給で買ってあげたものだった。
母が言うには、随分古いセーターなのにこれだけは丁寧にしまってあったという。父は他界する随分前から認知症が進んでいたが、そのセーターは私から貰ったものだと分かっていて大切に取り置いていたのかもしれない。そのセーターが長い年月を経て、自分の手元に戻って来た事は何か因果を感じる。
就職した年のゴールデンウィークに東京から帰省した際、父に手渡したものだった。父は「気に入った」と言って嬉しそうに受け取った。幼いと思っていた自分の子供がいつの間にか一人前になり、給料を貰うようになった、と感慨深いものがあったのだと思う。
一九九六年