父は歌が自慢の一つだった。父が若い頃、NHKのど自慢に出場したことがあるという。鐘は二つだった。当時、テレビ放映ではなくラジオだった。

私が小学生の頃、カラオケの機材を持っている親戚の家に集まり、父達がカラオケ大会を何度かやっていた。父は皆から上手い言われていた。私は与作を歌った覚えがある。

私が大学生の時に家族でカラオケに行ったことがあった。父は一曲歌っただけでもう歌ったからと言って、遠慮しているようだった。本当はもっと歌いたかったのだろう。

父は、姉が大人になったらカラオケスナックに連れて行きたい、と何度か言っていた。父のその希望は叶ったのだろうか。お風呂の時にいつも何の曲か分からなかったが、同じ歌を口ずさんでいた。向こうの世界でもそうやって口ずさんでいる姿が目に浮かぶ。

一九九〇年代中頃