最も古い父の記憶は、保育園に行く前の三歳か四歳の時だった。
ある夜、私は重たい腹痛を感じながら一人で遊んでいた。母が熊の胆を飲ませてくれた後、しばらくして突然、戻してしまった。その後、父がピストルのおもちゃをお土産に持って会社から帰って来た場面が、父が登場する一番古い記憶である。そのおもちゃは小さな的を並べてピストルで撃って遊ぶもので、もらえた事がとにかく嬉しかった。
あの当時の家は、新築して間もない一軒家の持ち家だった。時代を感じさせる畳の部屋に、卓袱台が置いてあるような昭和の家で、庭には木がたくさん植えてあった。無花果の木に実がなると、取って食べたものだった。その無花果はいつも甘くて美味しかった。庭の前には線路があり汽車が通っていた。汽笛の音と共にのどかで牧歌的だった時間の流れが懐かしく思い出される。
一九七〇年初頭