転校生

小学生の高学年の時に、小川君という小柄で顔立ちがハンサムな転校生がクラスに入ってきた。小川君はなかなかクラスに馴染めずにいた。

体育の授業参観の時、小川君の若くて綺麗なお母さんが見に来ていた。しばらくすると、少し雰囲気の違うお父さんがグラウンドに入ってきて隅の方で見ていた。きっちりとしたスーツ姿で年配に見える小柄な紳士だった。小川君に、お前のお父さんか、と聞くと興味無さそうにそうだと言った。グラウンドの脇に運転手付の高級車が停まっており、すぐに車に戻っていった。

クラスには、遠藤君という面倒見のとても良い子がおり、彼のおかげでいつの間にか小川君もクラスに溶け込んでいた。小川君は、次第に笑顔を見せるようになり、本当に良い少年だった。

六年生の卒業と同時に小川君はまた別の地に転校していくことになった。私は、遠藤君と仲が良く、小川君も仲間に入れて三人で遊んだものだった。転校するまでに遊ぼうということになり、三人で空き地を見つけてバトミントンをやった事が楽しかった。

小川君が転校していく時のことをなぜか全く覚えていない。ただ、あの時の抜けそうな青空、短い草が青々と一面に広がっていた空き地、バトミントンを楽しんでいた光景、そんな事ばかりがこの歳になっても、時折、思い出される。あの太陽の日差しはもう二度と戻らない、と思うと幾許かの寂しさが心を覆う。

一九八二年