ポリ

ポリとは、小学三年生の時に飼った柴犬の名前である。ある時、母が仕事で交番に行ったときに捨て犬がおり、お客さんである警官の人から飼わないかと言われ、そのまま貰ってきた。交番から来たのでポリと父が名付けた。

犬を飼うためにはそれなりの覚悟が必要であるが、二つ返事で貰ってきてしまった。私たちは犬を飼ったことが無く知識は全くなかった。飼い方を習いにいくような風潮もその当時はなく、ただ適当に飼うだけだった。そのため手に負えなくなり、飼い犬を捨ててしまう人が多く、街をうろつく野良犬をよく見かけた。

ポリは物置小屋に場所を作って、そこをポリの場所にした。食べ物の知識も無かったため、ドッグフードをペットショップで買ったり、私たちが食べているものと同じものを食べさせたりした。ある時、私は、ポリにさきイカをあげてしまったことがある。犬には塩分が強すぎたからだと思うが、そのあとポリは辛そうに吐き出そうとしていた。あの時は本当にすまないことをしてしまった。

冬になり、私は学校から帰ってくるとポリを部屋に上げて抱っこしながらテレビを見たりした。犬は体温が高いので冷えた私の体を温めてくれた。

飼いはじめてしばらくすると、ポリは夜中から早朝にかけて吠えるようになってしまった。散歩が足りなかったのである。そのため両親が早朝に散歩につれていかなければならなくなった。それは共働きの両親には無理な生活だった。犬には毎日散歩が必要であることや食事のことなど、きちんとした知識が必要だが、それらを全く知らずに貰ってきたことがそもそもの間違いだった。

両親は、飼いきれなくなり、ポリを貰ってくれる人を探して引き渡すことにした。引き渡した人は父の仕事上で付き合いのある人だった。引き渡す日はポリを車にのせて随分遠くまで行ったと思うが、ポリと別れる時の記憶は残っていない。おそらく両親は私が悲しむと思い、私が車の中で眠っている間に引き渡したのだろう。

寒い冬にポリを抱っこしてみかんを食べながらテレビを見ていた、そんな日々があったことをよく思い出す。

一九七九年