夏場の早朝は、道端に大量のカナブンがおり、たまにカミキリムシ、カブトムシ、クワガタなどの珍しい生き物を見つけることができた。
虫取りが大好きだった私は、夏休みになると朝四時くらいに起きて一人で自転車で虫取りに出かけた。十歳にも満たない子供が、家族が全員寝ているなか、一人で出かけたりするような長閑な時代だった。
家を出ると焦げ茶色のカナブンが路上の至る所にいたが、その中でも白い線がストライプ状に入った珍しいカナブンがたまにいた。そのカナブンはチューチューと音を出すことから「チューチューカナブン」と呼んでいた。その珍しいカナブンを虫取りかごに入れながら、自転車で街中を走りまわった。
特に歩道橋には珍しい虫がいることがあるので必ず行った。その場所ではカミキリムシや型の良いカブトムシ、ミヤマクワガタを見つけたこともあった。
その時間に人通りはなく、車の通りも全くと言って良いほどなかった。辺りが明るくなりはじめる頃家に帰って、採集した昆虫を家にある大きな入れ物に移し、今度はラジオ体操が行われる空き地に向かった。
ラジオ体操は朝六時半から七時くらいの間に行われたが、私は六時前にはその空き地に行き、虫を探し回っていた。空き地と言ってもコンクリートで覆われたような場所ではなく、松林や背の高い草が生い茂っている所があるような場所だった。そこには、大きなキリギリスなど珍しい昆虫がおり、そのような虫を取ることが目当てだった。動きの速いキリギリスを捕まえることは特に難しく、めったに取ることはできなかった。
そのような自然が身近にあったことは、その時は気が付かなかったが今思えば恵まれていた。大きなクワガタやカブトムシを見つけた時、心の底から「やったー!!」と思ったあのような感動を味わったことはあれからあっただろうか。成長するにつれ、子供の頃のように全身全霊で嬉しく感じたり、無心でやりたいことにのめり込んだりすることは少なくなってしまった。時折、雄叫びをあげるほどの感動に溢れていたあの頃を思い出してみるのも悪くない。
一九七〇年代