五十年以上一緒に暮らし父を見てきた母の視点からは、冷静に見た上でそんな簡単に整合性が取れるわけではなかった。
「自分に都合の悪いことは一切言わず、都合の良いように変えた話が次々と口から出てくる。その時によって言うことが変り、全く信用できない。いつも肝心なことは抜けているが、お金に関する事になると非常に執着が強く、恐ろしいほど記憶力が良い。掴み所がなく得体がしれず、全く温か味のない人間」
母の父に対する見方だ。
母が実家に戻った後、体調の完全な回復からは程遠い状態でも、結局、家事はほとんど母がやっていた。父は「今まで母に世話をして貰った分、今度は自分が母の世話をしてやりたい」と母が戻る前に言っていたが、それはやはり嘘だった。言っていた事と違うと問われると「母が以前と同じように元気そうだから」と父は自分の都合の良いように言う。このようなことも母の見方が正しいことを証明している。
母は長い年月に渡って精神的打撃を受け続けており、母にしか分からないことが未だ数多くある。それでも母は、急な時はお互い様と思って、父が何度となく病気になり入院した時など献身的に世話をしてきた。
そのような想いも、七年前のことで決定的に裏切られた。それがどのような理由であったとしても、母の中で父に対する見方が変ることは決してない。