夜間の急患

病院に着くと、事前に母から連絡を受けていた医師や看護婦が入り口で待っていた。母は看護婦に支えられながら車を降りて病院に入って行った。

夜間の急患なので車は入り口に置いたままで構わないと看護婦に言われていたが、父は車を駐車場に置きに行ってしまい、そこに父の姿は無かった。そのため他の医師や看護婦は、母が一人でタクシーで病院まで来たと思い驚いていた。しばらくして父はようやく病院に入った。

母はとにかく子供に知らせて欲しいと周囲に必死に伝えていた。医師は、切迫した状況の中、子供に早く知らせるよう語調を強めて父に言っていた。そうである、助からない可能性が高かったのだ、心筋梗塞だった。私が姉から連絡を受けたのは手術後だった。「母が倒れた、手術は成功したが、この夜が峠になる」と知らされた。

私はなぜか動揺することもなく冷静だった。手術が上手くいったという言葉に安心したのかもしれない。また、すぐに帰国しようとも思わなかった。もしそうすれば、まさに峠となる時間帯に情報から隔離されてしまうことが怖かった。

母は絶対に大丈夫という自信と共に、祈る気持ちが心に広がっていた。