一人暮らし

三月の下旬に母と共に再び上京した。下宿先の部屋には冷蔵庫とベッドは付いていたが、ベッドは不要だったので大家に撤去してもらった。

家財を揃えるため秋葉原に行き、レンジ、オーブントースターや一人用の電気釜などの必需品、テレビは置く場所が無かったため手の平サイズの携帯テレビを買った。洗濯機は無いため、近所の銭湯に隣接しているコインランドリーを使用することにした。

その日は、まだ不便な状態の部屋に泊まり、次の日に新幹線で帰った。後日、両親と車で布団など比較的大きな物を運んだ。やっと生活できるようになり、私は生活に慣れるため下宿に残り、両親はその日のうちに車で帰った。次に両親が来るのは、十日ほど後の武道館で行われる入学式の日で、新幹線で来ることになっていた。

両親が帰った日に初めて一人になった時は、まともに生活していけるのだろうかと不安だった。実際に右も左も分からない状態で、どこで買い物をすれば良いのか、どこに何があるのかなどを確認して歩いた。最初はスーパーに入って、出来合いのコロッケを買ってみたり、ソースや醤油を買ったりした。米や缶詰は両親と来た時に持って来てあったので食べるもはあったが、勝手が分からず大変だった。

ぼんやりしている間に時間が過ぎて行き、気が付いたら動けないくらいおなかが空きすぎてしまったことがあった。その時は定食屋がどこにあるかも分からず、思い付いたのが最寄り駅の中にあった天丼屋だった。すぐに駅まで行って五〇〇円の天丼を食べた。一食で五〇〇円の出費は痛かったが、それどころではなかった。あの時食べた天丼は空腹にしみてとにかく美味しかった。

今思うと情けない話だが、こんな風に私の一人暮らしが始まった。

一九九〇年四月