大学受験が終わり、気持ちが晴れない日々が続いていた。一年など瞬く間に過ぎ去って行くことは十分に承知しており、すぐに来年の受験の事を考えなければならない、と焦る気持ちがすでにあった。
三月も終わる頃、家で物思いに耽っていた時、中学の同級生だった女子生徒から電話が掛かって来た。十分後くらいに家の前に出てきて欲しいと告げられた。その女子生徒はクラスでも優等生だった。私の高校の隣にある女子高校に行ったことまでは知っていたが、それ以来会うことは無く、朝、学校に行く途中で一、二度見かけたことがあるくらいだった。
私は、寝間着のような恰好で何日も自分の部屋で考え事をしていたので、電話を切ったあと服に着替え、顔を洗ってから家の前に出た。そこには中学時代の時と変わらない女子生徒の姿があった。突然呼び出して申し訳なかったと言い、私にずっと好意を寄せていたと伝えられた。
その時の私は、今後の受験の事しか考えることができず、余裕を持って応対することができなかった。来てくれたことにお礼を言った後、その年の受験に失敗して、また翌年に受験し直すために今から勉強を始めないといけない、という事を伝えた。その生徒からはどこの大学を受験するのかなどを聞かれたりした。そんな立ち話をしばらくしてから「それではまた」と言って別れた時を最後に、それ以降その生徒と会う機会は無かった。
あの時のぶっきらぼうな態度を申し訳なく思うと同時に、あの女子生徒は今何をしているのだろうか、元気にしているのだろうか、と懐かしく思い出される。
一九八九年三月