共通一次試験

時が経つのは早く、夏休みが終わると過ごしやすい秋になり、そのような良い季節もあっと言う間に過ぎ去って冬になっていた。その時期になっても、模擬試験では思うように点数が取れていなかった。そして、試験への準備が十分ではなかったが、年明け早々の共通一次試験当日が遂に来た。

その日は、雪がちらついており寒い日だった。会場となっていた大学へは、バスで三十、四十分ほどかかる距離だった。試験は、朝から夕方まで二日間に亘って行われた。

試験の時の記憶はほとんど残っていないが、試験を終えた後の自己採点では目指した点数は取れていなかった。国立大学は、共通一次と二次試験の合計点で合否が決まることになっており、実質的に共通一次の点数が足切りの意味を持っていた。また、様々な私立大学の入試が、国立大学の二次試験の日程より早く始まっていた。

共通一次試験の頃になっても目標を見出すことができなかった私は、底なし沼に嵌っているかの如く、もがけばもがくほどゆっくりと沈んでいくような感覚に心が覆われていた。その時の私は、今の自分には大学受験をする意味は無いと本音では思っていた。

国立大学は、共通一次の結果を基に通常二つまで、私立大学はいくつでも願書を出すことが出来たが、私が出した願書は国立大学一つのみだった。私のような願書の出し方をした生徒は他にはいなかったと思う。私は、迷いの直中にあり本当は受験する気にはなれなかったが、それでも受験した理由は周りの目が気になったからという以外になかった。

一九八九年一月