人生の中で忘れられない分岐点は間違いなくあの時だった。そして人生のハイライトがあるとすればこの時をおいて他には無い。それは高校受験で合格したあの瞬間だった。あの瞬間がなければその後の人生は全く異なっていたに違いない。
いま振り返っても十五歳になったばかりの私には高校受験の緊張感は荷が重かった。中学に入り中間試験と期末試験がそれぞれの学期にあり、学年の順位が発表された。初めての試験は学年の総人数が四〇〇人くらいのところ三六〇位くらいだった気がする。ほとんど最下位だった。くやしかった、でもどうすればよいのか分からなかったし、勉強の仕方も全く分からなかった。一年生の秋頃、塾に通いたいと親に言ったらしい。私は覚えていないのだが母親が私から塾に通わせて欲しいと言って来たと話してくれた。その頃から週に何回か通い始めた。
その年の冬に初めての模擬試験を緊張しながら受けたことが印象深く記憶に残っている。雪の深い年だった。その日も辺りは雪が積もっていたが天気は良かった。試験を終えた私は自宅までかなりの距離があったが試験会場から歩いて帰った。その時の光景をやたらと思い出すことが多い。
学校が長期休暇に入ると春期講習や夏期講習に毎日のように通った。あれは三生の夏期講習だった。国語の先生が、今のように一つの目標に向かって頑張っているような日々は人生でもそうたくさんはなく、とても充実した青春の日々なのだよ、と言っていたことが忘れられない。その時は全くピンとこなかったが、あれから三十五年という歳月が流れてみるとあの先生の言葉が胸に染み入る。あの日々の夕日の美しさや活気のあった街の雰囲気が忘れられない。そんな遠く淡い記憶は、時折、私を物思いにふけさせる。
一九八三年四月~一九八五年夏