あれは小学三年の夏、お盆に墓参りに行った時のことだった。
墓石のある所は、田園が辺り一面に広がっており、月の明かりに照らされたその風景は何とも神秘的な光景だった。
墓参りをしている時に、私は一匹のもずが墓石の辺りを這っているのを見つけ、虫かごに入れた。その頃の私は虫取りが大好きで常に虫取り網をかごを持ち歩いていた。
墓地のある場所は大きな木々が茂っており、もずの殻がその木々に無数にくっついていた。そのため、まだふ化していないもずはめずらしかった。
その後、母方のご先祖の墓参りを済ませると、墓から近くの母の生家に行った。その家で私はもずをずっと見続けていた。午前二時を回った頃だった。もずから蝉が成虫となり、真っ白で微妙に緑がかった蛍光色のような光を放ちながら出てきた。その幻想的な美しさは今も忘れられない。幼少の私は眠気に逆らえず、その辺りで記憶は途切れてしまっている。
次に目が覚めた時は早朝で、あの不思議な光を放っていた蝉は、普通の茶色いアブラ蝉となっていた。その姿に私はショックを受けた。あの美しい見たこともない色の状態のまま永遠にいて欲しいと強く願っていた。
その後、成虫となった蝉がどうなったのかは覚えていない。お盆の時期になると、人生でただ一度の不思議で幻想的なこの体験を必ず思い出す。
一九七九年八月十三日