あれは何歳の頃だったのがろうか。夏の日の心地よい夜だった。随分と昔なので街灯もあまりなく、辺りは深い闇に覆われていた。私は母の背中におぶさり、うつらうつらしていた。母はまだ小さかった私を寝付かせるため、姉と散歩に出たのだろう。
家は高台にあったので、坂を下って歩いていると遠くで花火があがっているようだった。私は母の背で花火の音を聞いていた。
坂を下り終えた辺りで私は目が覚め、花火があがっているのをはっきり見ることができた。それは一発ずつのシンプルな花火がゆっくりとドーン、ドーンと遠くで響きながらあがっていた。それはひとけのない場所からひっそりと見る、私達だけのささやかな花火大会だった。
花火があがるその夜空には大きな月が出ていた。十五夜のお月様かね、という母の声が今も耳に残っている。
花火大会と言えば、大勢の人が見物に出ている賑やかなものばかりを想像するが、そのささやかな花火が私の記憶に最も印象深く残っている。あの十五夜のお月様の夜空に真っ赤な花火があがっている光景が今も鮮明に思い出される。
一九七〇年代前半