小学二年の時、クラスの子で帰り道が同じ女の子と仲良くなり、よく一緒に帰った。その子の家はお金持ちで家がとても大きかった。家の門を入ったすぐ横に車庫くらいの大きさの場所で柴犬が飼われていた。その門から玄関までは二十メートルくらい離れており、歩行用の石畳が手入れの行き届いた芝生の上に敷かれていた。
下校の時、よくその子の家に寄ってから帰った。門を入ったすぐの所で犬を撫でたりして遊んだ。その子の家に入ったことは一度くらいはあったかもしれないが、ほとんどは犬が飼われている場所で遊ぶだけだった。
その子は世話好きで、何事もやることが遅かった私をいつも助けてくれた。その年頃特有のお世話好きな女の子だった。早生まれで精神年齢も皆より低かっただろう私は、弟のように見えていたのかもしれない。工作の授業や何か作業の時などいつも遅い私を手伝ったり、代りにやってくれたりした。
小学三年のクラス替えでその子とは別々のクラスになってしまったため、その後、一緒に下校することはなくなった。高学年になるとその子はクラスの人気者になっており、同じクラスの男の子は殆どがその子を好きになっていた。
同じ校区だったため、中学も同じだったが、中学生になるとその子は目立たない存在になっていた。その子とはクラスが同じになることも接点もなく、中学時代に話すことは一度もなかった。高校も別々だったので中学を卒業すると近くに住んではいたが見かけることも無かった。
高校一年の冬、今の恩師である先生が運営していた英語教室に通い始めたが、しばらくしてその子も入塾してきた。突然の再会でお互い驚いたものだった。小学二年の頃の私を知っている彼女を前にして、私は気恥ずかしくていたたまれなかった。彼女は私をとても優秀だという目で見ており、一層恥ずかしさが増した。
その後、高校卒業まで塾で共に学んだ。彼女は現役で薬科大学に進学し、私は浪人することになった。最後に会ったのはいつか覚えていないが、高校卒業後に会う機会は無かった。
たまの帰国で彼女の実家近くを通りかかると、その子と一緒に犬を撫でて遊んだ遠い昔い日々が目に浮かぶ。
一九七八年