小学四年の時に菊池君という転校生が入ってきた。彼は少し大人びていて体格も良く、運動神経抜群だった。私はサッカー部で一軍の補欠選手だったが、彼は入部してすぐにレギュラーになった。
付属小学校から転校してきており頭も良く、女子生徒から人気があった。私は、気が合ったのか菊池君とすぐに仲良くなり良く遊んだ。彼の家に一度行ったことがあったが、出来たばかりの綺麗な一軒家だった。お母さんがスパゲティーを作ってくれたが、それがとても美味しかった。洋風の静かな部屋のしゃれたテーブルで、椅子に座って食べたことが新鮮だった。品のある奥様という雰囲気のお母さんは感じの良い人だった。
小学五年の頃から私と彼は、バッティングセンターのゲームコーナーで遊んだりするようになった。その当時は少し悪いことをしているような後ろめたさがあった。彼は、ゲームが得意だった私とゲームセンターにいっしょに行きたがった。
彼が、六年生になる前に転校することが決まると、私をゲームセンターにそれまで以上に誘うようになった。私は、お金が無いので行けないと言うと彼は自分がお金を出すから行こう、と誘ってきたりした。彼の家は裕福でお小遣いも多く貰っていたのだろう。良くないことだとは思ったが、ゲームが好きだった私は何回か彼にお金を出してもらって、ゲームセンターにいっしょに行った。
小学六年には、サッカー部は全国大会に出場したが、彼はもう転校してしまっていた。チームの中心的存在だった彼がいたならもっと勝ち進めたのだろう。私は、菊池君が転校して行った日の事を朧気にしか覚えておらず、いつの間にか去って行ったような印象が残っている。文武両道の彼なら何処かでサッカー部の時のような活躍をしているに違いない。ゲームセンターに行く途中、みぞれがちらつくなか、緊張感が漂っていた寒さと外気が懐かしく思い出される。
一九八一年